はじめに
今回は分散の点推定について見ていきましょう。
知りたいのは母集団の分散である母分散ですので、
厳密には母分散の点推定になります。
今回も前に学んだ不偏性がポイントになります。
標本分散を点推定に使える?
今回もまた成人男性の身長について考えるとして、
母集団は日本人すべての成人男性の身長としましょう。
そして標本にはある男性Aさん、Bさん、Cさんの3人の身長についてのデータがあったとします。

Aさんは164cm、Bさんは170cm、Cさんは173cmで、3人の身長を平均すると169cmでした。
ここでいま私たちが知りたいのは母集団の分散、すなわち母分散ですね。
母分散を推定するのに使えそうな値といえば、思いつくのはDay11で学んだ標本分散です。


標本分散は
分子に平均と各値との距離の2乗の合計
分母に標本の大きさ
をとります。
これを計算してみると

分子にはAさん、Bさん、Cさんそれぞれと平均との距離の2乗を合計した値、
分母には今回の標本の大きさである3がきます。
これを計算すると14となります。
さて、問題はこの標本分散に例の不偏性というものがあるかどうかですね。
不偏性があれば母分散と一致することが期待されるので、それを頼りに母分散の点推定に用いることができます。
しかし、実は残念ながらこの標本分散には不偏性がないということが知られています。
標本分散は平均的に母分散と一致するということが言えないんですね。
この理由については次回考えていくとして、ではどうやって母分散を点推定すればよいのでしょうか。
不偏分散
実はばらつき指標には標本分散に加えて不偏分散というものがあります。
これは標本分散と同様に分子には平均と各値との距離の2乗の合計がくるのですが、
分母には標本の大きさである3ではなく、3から1を引いた値がきます。
つまり、
不偏分散
=(平均と各値との距離の2乗の合計)
÷(標本の大きさー1)
となります。
不偏分散は距離の2乗の合計を標本の大きさから1を引いた値で割った値と言うわけです。
なぜ1を引くのかについても次回考えていくとして、この不偏分散は名前に不偏とあるように、不偏性があることがわかっています。
したがって分母を標本の大きさからマイナス1して計算する不偏分散を用いて母分散の点推定を行うことになります。

おそらく、なんで標本分散には不偏性がないのかとか、不偏分散はなぜ標本の大きさからマイナス1するのかといった疑問が浮かんでいると思います。
それについて次回の記事で見ていきましょう。
※ちなみに不偏性の他にも一致性といった母数の推定に用いるために留意すべき指標がいくつかあるのですが、まずは一番重要なこの不偏性だけ理解しておけばよいかと思います。
まとめ
最後に今回の記事のポイントを整理します。
- 標本分散には不偏性がない
- 分母を「標本の大きさー1」として計算される不偏分散というばらつき指標がある
- 不偏分散には不偏性がある
今回も最後までご覧いただきありがとうございました!

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